* ひこ雑感 その11

* ビデオカメラ

   江東区立深川第三中学校で13年間勤務した後、同じ区内の第三亀戸中学校へ転任しました。
   新しい環境で授業が始まったばかりの頃です。
   三亀中には素晴らしい理科の先生が揃っていて、東京都理科教育の研究指定校を引き受けていました。
   特別予算で、当時学校の教材教具の備品としては、高嶺の花だったビデオカメラが購入してありました。
   ロッカーに仕舞い込んで、誰も使っている気配がありません。
   これを英語の授業に使わせて貰いたいと厚かましくも理科主任に相談してみました。若造の新任教師でしたが、
   何事も生徒の為、いやに気が強くなります。
   当時のビデオカメラは、カメラと録画器が分離しており、ケーブルで繋がっていました。所謂、デンスケと
   読んでいたもので、今では博物館でしか、お目にかかれない代物です。快諾の下に、早速使わせてもらいました。

   先ず教科書の内容を紙芝居に作成する。台詞等の音声は、テープレコーダーに録音しておく。壁に絵を貼り、
   給食用のワゴンにデンスケを載せ、私もそのワゴンにカメラを持って座る。それを生徒が少しづつ少しづつ押す。
   映画のロケさながらです。音声をテープレコーダーで再生して、画像と音声をカメラに収めたら、あとは試写会!
   映画好きの私は映画監督兼カメラマンになって有頂天。生徒は、自分たちが描いた絵と吹き込んだ英語が見事な
   映画となって、感激。私の気分は全く童心に帰り、生徒と一体感を味わいました。
   以後の授業はかなり心の通うものとなりました。
   私は何でも新しい物に飛びついてしまう癖があるのですが、この時は成功でした。



* 徹子の部屋

   新しい学校には、第二音楽室がありました。音楽の先生に聞くと、講師の先生が使う音楽室とのこと。
   時間割を調べると、二人の先生の重なる授業は、週3回。そこで音楽の先生に交渉しました。
   重なる3時間以外の時間を、英語の授業に使わせて欲しいと。
   新任教師としては、これも厚かましいことではありました。「生徒の為」です。これも快諾を得ました。

   事務の先生の協力もあって、音楽教室の前方右手のコーナーに丸いテーブルを置き、そのテーブルをはさんで、
   来客用の椅子を二つ借りました。
   授業の中で、私が徹子役になり、生徒がゲストとなるのです。英語でインタビューを行い、他の生徒は、
   「徹子の部屋」のテレビ番組を見ている状態です。生徒は実によくゲストを務め、時には教室中が大笑いに
   なりました。この為第二音楽室は、稼働率よい教室となりました。校長は喜んでくれたし、外部の学校からも
   大勢の先生方の見学がありました。徹子の部屋ならぬ第二音楽室に感謝!